ゲーテ ヒューマン

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「100%電気革命」を連れてきた男 イーロン・マスク

「100%電気革命」を連れてきた男 イーロン・マスク

「EV車は必ず主流に。明るい未来は経営者が創る」

「EV車は必ず主流に。明るい未来は経営者が創る」

 そう当時の心境を振り返る。結局、母親の親戚がいるカナダの大学へ入学。だが、アメリカへの夢を捨てた訳ではなかった。
 「アメリカの、やる気さえあれば何でもできるという精神に惹かれていました。それに何といっても最新のテクノロジーがありましたし」と語るイーロン。そしてカナダから米・ペンシルバニア大学へ編入した時に、いよいよ彼のアメリカンドリームは始まった。
 まず、大学で経済学と物理学の学士号を取得。そしてカリフォルニア州の名門スタンフォード大学大学院でエネルギー物理学を研究する切符を手にした。しかし、そこからが彼の真骨頂。時は1995年、インターネットブームの到来である。ビジネスセンスに長け“コンピューターおたく”だったイーロンがそのチャンスを見逃すはずがない。
 即断即行動は成功する起業家の共通点。スタンフォードをわずか2日でドロップアウトして、彼にとって初の会社、Zip2 Corporationを設立する。街の情報をオンライン・サービスする会社で、ニューヨーク・タイムズ紙やシカゴ・トリビューン紙といった有名新聞社のサイトにコンテンツを提供するようになる。当時は資金が限られていたため賃貸事務所で寝泊まりしていたという。
 ベンチャー投資家から360万ドルを調達し、事業が軌道に乗ると、Zip2はコンパック社に3億ドル強で買収される。いかにもアメリカらしい。イーロンはZip2株のうち7%を保有していたから 、28歳にして2200万ドルの大金を手に入れたことになる。バブルに浮かれた日本のIT長者なら小躍りして散財してしまうところだろう。しかし、これは彼にとっては子供の頃から描いていた夢を実現するための第一歩に過ぎなかった。
 「他人が大切にしている価値観を考え、それを形にしてあげれば人はお金を払う。お金は社会で常に必要性のあるところへ流動するものです」
昨年10月にアジア初のショールームを東京・青山にオープンしたテスラ。「日本をアメリカに次ぐ第2の市場にしたい」と意気込みを語る。

昨年10月にアジア初のショールームを東京・青山にオープンしたテスラ。「日本をアメリカに次ぐ第2の市場にしたい」と意気込みを語る。

イーロンはロケット・宇宙開発を手がけるSpaceX社も経営する。

イーロンはロケット・宇宙開発を手がけるSpaceX社も経営する。

お金を何に使うか、目的を明確にしておくことが大切
お金を何に使うか、目的を明確にしておくことが大切

 イーロンのマネー哲学はいたってシンプルだ。言葉どおり、彼は手元資金を使いインターネットが普及した当時、誰もが必要と感じていたオンラインの金融サービスX.comを1999年に立ち上げる。続いてインターネットの決済サービス会社PayPalを手中に収める。そのPayPalを今度はネット通販・オークション会社eBayが15億ドルで買収。その瞬間、イーロンは1億6500万ドル相当のeBay株を取得することになった。
 「金儲けのために悪魔に変身してしまう人間もいるが、大切なのはそのお金を何に使うのかという目的をはっきりさせておくこと」と、イーロンは世の拝金主義者に忠告する。
 イーロンの目的は明確である。ふたつの夢の実現だ。一つは、地球環境を守るため持続可能なエネルギーを実現すること。二つ目は、人類の新しい環境を求めた、宇宙への旅立ちである。いずれも私財を投げ打って、人類のために自身を捧げるミッションである。
 「21世紀に課された最大の課題はエネルギー問題です。ガスや石油。もうそれが枯渇しかかっていることは皆、知っています。早く消費エネルギーから持続可能なエネルギーにシフトしていかないと。また、さらにその先のことまでを考えた、人間の移住先としての宇宙空間にも強い関心を持っています」

 ひときわ大きなジェスチャーを交えてイーロンはそう語る。あまりにも壮大な話であるため、彼を単なる“夢見人”と嘲笑する人もいる。しかし、イーロンはただひたすらまじめに目標に向かって走っている。
 「未来の私たちの進化と発展は、この地球の構造を理解した上で成り立つものです。そんな時代に私を含めこれからのリーダーや経営者にとって必要なものとは何でしょう? 明るい未来を信じられる仕事を創ること、それこそがリーダー自身の誇りにも繋がっていくと思うのです」

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