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滝藤賢一、伝説の男との格の違いを知る

滝藤賢一の映画独り語り座 Vol.35

俺は世界を変えられないが
俺に刺激された誰かが
世界を変える

『オール・アイズ・オン・ミー』

(C)2017 Morgan Creek Productions,Inc.

  • 『オール・アイズ・オン・ミー』
    2017/アメリカ
    監督:ベニー・ブーム
    出演:ディミートリアス・シップ・ジュニア、ジャマール・ウーラード ほか
    配給:パルコ/REGENTS
    12月29日より新宿バルト9ほか全国公開予定

20歳の正月のことです。『グリッドロック』というバンドマンふたりのバディムービーを観に行きました。『レザボア・ドッグス』『パルプ・フィクション』など、タランティーノ作品で大好きになったティム・ロス目当てでしたが、相棒役の黒人俳優が独特の雰囲気で、釘付けに。ドラッグがらみのドタバタ劇のなか、そいつは不良性があり、セクシー、憎めなくて、愛嬌も存在感も抜群。パンフレットを購入し、すぐにチェック。しかし、彼は日本公開の2年前に銃撃事件により死亡していました。アメリカ東西海岸ヒップホップ抗争の犠牲者となってしまったのです。『グリッドロック』はその彼の遺作。それがラップ界のスーパースター、2PACとの出会いでした。

今回、懐かしさから彼の伝記映画『オール・アイズ・オン・ミー』に飛びつきましたが、主演俳優は顔が似ているというだけで2PAC役を勝ちとった演技未経験の新人、ディミートリアス・シップ・ジュニア。父親が大金持ちのボンボンで現在、風来坊だそうです(笑)。毎日毎日2PACの生前の映像を見せられ、2PACを嫌いになっていたとか。しかし、演技が初めてであのクオリティーはすごすぎる......。黒人のなかに代々流れる血を感じさせられる強烈な演技。何代にもわたって抑圧されてきた怒りや憎しみが言葉の羅列という表現方法で、雹(ひょう)のように叩きつけられる。

2PACは母親がブラックパンサーの闘士で、世の中の理不尽と戦う姿勢を見てきた。いわば英才教育をうけてきたようなもの。さらに読書家で、勉強家。10代で演劇と出会い、シェイクスピアも演じています。

なにしろ彼は25歳までに成し遂げたことが多い。数々のヒット曲に、社会に対する影響力、そして役者としての活躍......。25年間で一気に人生を駆け抜けた伝説の男。対して、凡人の私はしぶとく長生きし、何とか歴史に爪跡を残そうともがき続けて早41年......。何となく気づいてはいましたが、私は彼のような伝説の男にはなれないようだ......。格の違いをまざまざと見せつけられた作品でした。

  • Kenichi Takitoh
    1976年愛知県生まれ。『重要参考人探偵』(テレビ朝日系)放送中。『コールドケース~真実の扉』(WOWOW)の続編が制作決定。

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Composition=金原由佳

*本記事の内容は17年11月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。 14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)

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