ウェブゲーテは日経電子版とのコラボレーションサイトです

古館伊知郎の眼鏡は個別的自衛権の発動

大人の見栄張良品
フリーアナウンサー 古舘伊知郎氏

フリーアナウンサー 古舘伊知郎

見栄を張る。それを見ている、もうひとりの自分がいる。

水牛のペントレイは好きすぎて使えず「削ってない鉛筆置き」に。

ヴィンテージウオッチは「過去と現在と未来の同時進行」。

水牛の眼鏡は「顔に自信がない個別的自衛権の発動であり、かけるディスカバリーチャンネル」。

ヴェネチアンガラスは赤と黒に善悪を思い、「器でも空の無常観」に惹かれる。

夜の報道の顔として敢えて封じていた自身の声が今新たなフィールドに立ち、自由に言葉に乗る。古館伊知郎氏にとってファッションもそのひとつだった。なにせ「仕事も生活もファッションのためにやってきた」と言うほどなのだから。

「つき詰めれば人間は孤独であり、それを満たすために愛があり、社会とつながる仕事がある。愛と仕事、いわば公私なんですが、それで孤独が癒やされるかというとそうでもなく、隙間風が吹いていると思うんですよ。僕にとって服や小物というのはその隙間を埋めるものなんです」

満たされない気持ちや不安を埋めるものであるが故、時には見栄を張ることもある。だがそんな姿を冷静に見ている、もうひとりの自分がいる。

「例えば高級ブランドだけで全身揃えてしまうと身の置き所がなくなっちゃう。分不相応な感じで。そこに安心感はあってもそれだけの物差しで測ると思考停止に陥るじゃないですか。そうならないためにもコーディネイトをわざとずらすんです。着ている間は落ち着かない。でも家に帰れば、今日一日嫌な思いをしたのだから、明日がんばろうという気持ちになる。いわば断食して活性化させるようなもの。ファッションファスティングですよ」と笑う。

一方で衝動買いしたり、買いすぎてしまった時には「私が買っているのではありません。ドーパミンが私を買わしめているのであります」と気持ちを楽にさせる。それも古館氏らしい。

「もうしょうがない。屈折してるんだから。今も迷っているし、粋についても見栄の張り方もよくわからない。でもそれでいいかなと思っているんです。完成形だと終わっちゃうじゃないですか。だから好きな言葉も"人生工事中"なんです」

そんな古館氏の愛用品は上のとおり。いずれも本人の言葉以上に、持ち主の人となりを語るではないか。それでも大好きな服を出さないのは、今も工事中だからだろうか。

  • 1954年東京都生まれ。トークやバラエティーなど多方面に活躍の場を広げる。所属事務所ではファッションFAB施設「アンドメイド」https://andmade.tokyoを手がけ、自身もその活動をサポートする。

Let’s SHARE:

共有

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • この記事をmixiチェックに追加
  • この記事をLinkedInに追加
閉じる

Styling=高見佳明 Hair & Make-up=キクチタダシ(LUCK HAIR) Cooperation=District UNITED ARROWS

*本記事の内容は17年9月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。 14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)