ゲーテ いま、一番気になる仕事 - 連載

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いま、一番気になる仕事
滝川クリステル いま、一番気になる仕事|Redefining The JOB Special Vol.15|スペシャル対談 渋谷正信/潜水士×滝川クリステル

滝川クリステル いま、一番気になる仕事|Redefining The JOB Special Vol.15|スペシャル対談 渋谷正信/潜水士×滝川クリステル

環境破壊の名人からの脱却。海と水中工事の共生を目指して 潜水時間は延べ3万時間以上。潜水士という過酷な仕事において、30年以上、第一人者として、日本中の海中建造物を手がけてきたプロ中のプロ。彼が今、命を賭けて取りくむものとは――?
渋谷正信氏/滝川クリステルさん 3分の2以上の仕事は地上から見えない過酷な現場 3分の2以上の仕事は地上から見えない過酷な現場

深さ数十メートルでの、長時間にわたる作業がざらという海洋工事。足場が不安定な水の中で、根気のいる手作業はもちろん、地上でいうショベルカーの役割を果たす「水中バックホウ」を巧みに操る技術も必要だ。そのほか、海難救助や災害復旧など、仕事は多岐にわたる。

見えない所で身体を張るのが潜水士の仕事

滝川 業界の第一人者として「渋谷にできない仕事は諦めるしかない」と評される渋谷さん。まずは、潜水士=プロダイバーという職業がどういうものなのかをお話しいただけますか?

渋谷 潜水士とは、ひと言でいえば、“水の中の建設屋さん”です。例えば、本四架橋レインボーブリッジなどの基礎工事も全部、我々ダイバー(=潜水士)がやります。また、羽田空港などの空港や港湾の建設工事、さらには、金属探知機を使った不発弾の探知、沈没船などの引き揚げなども、すべてダイバーの仕事です。ちなみに私も、レインボーブリッジは4年間、東京湾アクアラインの海ほたるの基礎工事は8年間やりました。また羽田空港をはじめ、日本の大きい空港の建設は、ほとんど手がけました。

滝川 その時、水中で溶接作業なども行うのですか?

渋谷 「溶接」と「切断」は日常的な作業で、これができないと我々は、もう全然仕事になりません。あとは、水の中で石を均したりする仕事もあります。だいたい石をプラスマイナス5センチくらいに均して、はじめて、その上に防波堤などが乗っかるわけですね。

滝川 水中でプラスマイナス5センチで石を均すというのは、本当にすごい技術だと思います。でも、私を含めてほとんどの人は、普段、それを見ることがありません……。

渋谷 そうですね。空港でも橋でも港でも、実は上に出ている分の工事は3分の1で、水中での工事が3分の2なんですが、何しろ見えない。だから、我々の仕事は、誰にも評価されない仕事なんですよ(笑)。

滝川 でも、お聞きすればするほど、潜水士の仕事というのは私たちの生活を支えてくれている陰の立役者だと感じます。例えば、下水処理場の仕事なども本当に凄絶で、驚きました。

渋谷 潜水士の仕事を始めた頃、30年前くらいに初めて東京の下水処理場に入った時は、私も驚きました。水はもちろん糞尿だらけ、おまけにゴキブリやネズミの死骸もいっぱいで。何度も「ほんとにここに入るんですか?」と、注文した人に聞きました。でも、その答えは「はい。この中に入って、ここで作業をやってきてください」と(笑)。

滝川 過酷、というひと言に尽きますね。しかも当時は、渋谷さんが日本に広められた汚濁潜水用の潜水具「ダーティーハリーII」もなかったんですよね?

渋谷 ええ。いわゆる普通のダイブスーツとレギュレーターと酸素ボンベだけの装備です。だから入る時は嗅覚も何もかも、自分の中で、とにかく全部麻痺させる。そして、「これがプロなんだ、これがプロなんだ」と言いきかせながら入っていきました。

滝川 すごい……。でも、それで身体を壊されたりは?

渋谷 冬はそうでもなかったのですが、夏場はやっぱり、みんな下痢を起こしたりしていました。だから自分が会社を持って、若い人にやらせようと思った時に、それではやっぱりよくないなと。それで、アメリカとかイギリスなどへいろいろ探しに行って、どんな汚濁水に入っても周囲の環境から完全密封してくれる「ダーティーハリーII」を探してきたんです。今では私の息子も、これで下水処理場に入っています。

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