ゲーテ いま、一番気になる仕事 - 連載

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いま、一番気になる仕事
滝川クリステル いま、一番気になる仕事|Redefining The JOB Special|スペシャル対談 稲盛和夫/京セラ名誉会長 日本航空代表取締役会長×滝川クリステル

滝川クリステル いま、一番気になる仕事|Redefining The JOB Special|スペシャル対談 稲盛和夫/京セラ名誉会長 日本航空代表取締役会長×滝川クリステル

稲盛 「何も知らない稲盛が会長を務めたって必ず2次破綻するだろう」「晩節を汚すのは目に見えている」とか、いろいろなことを言われました。着任してみますと、やはり日本航空の中に“真のリーダーがいない”ということがはっきりわかりました。すべてが悪い意味での官僚組織になっていたのです。現場で叩き上げて必死に生きてきた人ではなく、一流大学を出てエリートコースを歩いてきた人が全体を支配していたんですね。すぐ「これは大変だ」とわかったので、まずは幹部社員の意識改革に着手をしたんです。昨年の6月に17回、夜仕事が終わってから幹部50〜60人を会議室に集めて、「人間としてどうあるべきか、集団のリーダーとしてどうあるべきか」という議論を繰り返しました。

滝川 稲盛さんの意識改革の意図は、すぐに皆さんに理解してもらえましたか?

稲盛 やはり最初はかなり違和感があったようです。しかし、意識改革なくして再建はあり得ないと思ったので必死になってやりました。例えば夜9時くらいになると、無給の私がビールを買って差し入れる。そうやって一杯飲みながら話すとちょっと心を開きますから、いろいろと反論を言い始める。言わせておいて、「そりゃあんた、おかしいよ。その意識では八百屋も経営できないよ」などと話す。そういう対話を続けるうちに、社員全体の意識がみるみる変わっていきました。もともとは暴れん坊で反発も一番強かった人がコロッと変わってくれると、後は将棋倒しみたいに変わっていった。「もっと早く会長の話を聞いていれば、私の人生も変わったと思います。JALもここまでならなかったと思います」と言ってくれる人が出てきた。そして、意識が変わっていくにつれて、業績も上がっていきました。

稲盛和夫氏
時代も経済も、それを動かす原動力は結局人間の心です。 Kazuo Inamori

1932年鹿児島県生まれ。鹿児島大学工学部を卒業。1959年、従業員28名で京都セラミック(現・京セラ)を設立。グループ全体の売上は1兆3000億円弱。1984年DDI設立(後にKDDと合併し、KDDIに)。2010年2月、JAL会長に無報酬で就任。その後生まれたJALのフィロソフィは「JALグループは、全社員の物心両面の幸福を追求し、一、お客様に最高のサービスを提供します。一、企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献します」

昔の日本人が持っていた素朴な哲学こそ復興の鍵

滝川 そんな風に、一度は再建不可能といわれるところまで陥った日本航空の業績をも変えてしまった。稲盛さんの意識改革の柱になっているものとは、ひと言で言えばどういうものなのでしょうか?

稲盛 私のフィロソフィ(=哲学)というのは、人間として最低限持つべきベーシックな道徳観なんです。実は、今まで日本のエリートたちはそういう道徳観、倫理観というものをないがしろにしてきた。なぜ20年近い間、日本経済全体がこれほど低迷したかというと、日本の各階層のリーダーに、その基本的な哲学が欠けていたからです。もっと言えば、哲学に基づく高い目標や強い願望、意志でそれを実行していこうという“心の強さ”が欠けていたことが一番の要因です。かつて世界中から奇跡といわれた戦後の復興を果たした時、日本の産業界は強かったし、実は今でも強いんです。ものづくりの技術、人材、資産の面においても、今でも世界で屈指の力を持っている。それにも関わらず、日本の後を追いかけてきた韓国のサムスン電子やLG電子、現代自動車の後塵を拝してしまった。しかしリーダーたちには、追い抜かれた新興国に、再び追いついていこうという気力もない。それが問題なんですね。

滝川 しかし一方で、被災地の方々の“強い精神力”は、今回、本当に世界中の人々から称賛を集めました。

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