ゲーテ 出井伸之 対極を愉しむ - 連載

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出井伸之 対極を愉しむ
対極を愉しむ 出井伸之 Vol.16|規制大国の車 vs. アウトバーンの国の車

対極を愉しむ 出井伸之 Vol.16|規制大国の車 vs. アウトバーンの国の車

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所要時間を聞くと車は何?と問われる

所要時間を聞くと車は何?と問われる

 国の風土や特徴がその国のものに現れ出ることは少なくない。車はその好例だろう。ドイツ車は制限速度がなく、距離も長く、直線の多いアウトバーンがあるからこそ、スピードと制動にこだわった質実剛健な車づくりができていると思うのだ。一方、アメリカ車となると、同じフリーウェイが発達しているといっても、車づくりのコンセプトがまったく違う。車内が広く、ふわふわしたゆとり感を思わせるのは、国土の広さ、豊かさゆえ、かもしれない。
 イタリア車は、真っ赤な色に象徴されるように刺激と競争好きがよく表れている。車は、異性にモテるための重要な道具でもある。そしてフランスといえば、街乗りスポーツカーが中心。仕事人も週末になれば、エレガントな車で街や郊外に繰り出す。インパネにまで気を配ったデザインと、狭い道を小気味よく走るためのエンジンとブレーキが特徴である。
 こうした個性は個々のメーカーにも出る。例えば同じドイツ車でも、どの場所に会社があるか、で特色は変わる。基本的に、よく走ってよく止まるのがドイツ車だが、曲がる技術に優れたメーカーがBMWだ。なぜか。本社がミュンヘンの山の中にあるからである。また、フォルクスワーゲンのインパネは緻密に設計され、銀行のATMのようだ。どこかを押せば、お札が出てきそうな空気感がある。
 それこそドイツでは、ミュンヘンからフランクフルトまでどのくらい時間がかかるのか、と尋ねると、日本では考えられない質問が飛んでくる。「どのメーカーの、どの車種なのか」である。車によって、大きな違いが出るからだ。違う言い方をすれば、メーカーの選択はそのくらい大きな意味を持っている、ということである。
 さて、日本車には、どのくらい日本らしさが出ているだろうか。残念ながら、日本はこれだ、が浮かんでこない。メーカー間の個性の違いも同じ。このメーカーはこれだ、という鮮明な個性も、どんどん希薄になっているのではないか。
 むしろ日本車のイメージは無個性である。日本で車が売れないといわれて久しいが(軽自動車を除いて)、それはユーザーの心を動かすプロダクトに魅力がないからではないか。だが、実はこれは、車に限ったことではないのである。

出井伸之氏

北京出張でインターコンチネンタルに宿泊、ベッドにはさり気なくプレゼントのパンダのぬいぐるみが。

Nobuyuki Idei

東京都出身。早稲田大学政治経済学部卒。クオンタムリープ代表取締役。ソニーアドバイザリーボード議長、アクセンチュアや百度(Baidu)の取締役も務める。1960年ソニー入社。スイス、フランス赴任後、オーディオ、コンピュータ事業の責任者を経て、社長、会長兼グループCEO、最高顧問を歴任。近著に『日本大転換』(幻冬舎新書)。

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