ゲーテ 出井伸之 対極を愉しむ - 連載

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出井伸之 対極を愉しむ
対極を愉しむ 出井伸之 Vol.02|起業家精神 Entrepreneurship vs. 官僚精神 Bureaucratism

対極を愉しむ 出井伸之 Vol.02|起業家精神 Entrepreneurship vs. 官僚精神 Bureaucratism

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出井伸之氏 Nobuyuki Idei

1937年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。クオンタムリープ代表取締役。ソニーアドバイザリーボード議長、アクセンチュアや百度(Baidu)の取締役も務める。'60年ソニー入社。スイス、フランス赴任後、オーディオ、コンピューター事業の責任者を経て、社長、会長兼グループCEO、最高顧問を歴任。近著に『日本大転換』(幻冬舎新書)。

アメリカ人も知りたい、アジアのイノベーション

アメリカ人も知りたい、アジアのイノベーション

 ソニー時代に親しくしていた「フォーチュン」誌のジャーナリストからカンファレンスの誘いが来た。彼が仲間とカリフォルニア州のレイクタホで開催した「テコノミー」である。テクノロジーとエコノミーをかけ合わせた造語で、“もう一度、テクノロジーでエコノミーを”という催しだったわけだが、アメリカのイノベーションへの強烈な思いは変わっていないと感じた。参加者には、マイクロソフトのビル・ゲイツ、Javaの開発者ビル・ジョイ、グーグルのエリック・シュミット、アマゾンのジェフ・ベゾスなど、著名な経営者、学者の錚々たる顔ぶれが200人も揃っていた。それこそ僕にとっては、昔なつかしい戦友が勢揃いだったのだ。

 僕が参加を請われたのは、イノベーションがこれから起きるアジアについて語ってほしい、という期待だったと思う。僕が話したのは、アメリカ人の知らないアジアの現実とこれから何が求められるのか、だった。
 そもそもどんな組織でも、変わりたい願望と変わりたくない願望がせめぎ合っているものだが、今、アジアでは間違いなく前者が優勢だ。変わりたいニーズというのは、成長期こそ強いのである。シーズがあろうとなかろうと成長期にはイノベーションを論じる前にイノベーションは起きてしまうものなのだ。それこそアメリカがイノベーションについて論じている最中に、アジアで湧き上がっている、と僕は話した。

 しかし、その一方で、アジアにはまだ最低限のインフラさえ整っていない地域が多数存在している。例えばインフォシスという、まるでスタンフォード大学のような施設を持つグローバルIT企業がインドにはあるが、空港からの道にはハイウェイもなく、牛が歩いている。
 そこで僕が提案したのは“city OS”というイノベーションだ。都市化に必要なエネルギー、水、交通といったシステムを効率的に提供するシステムを、PCのOSのような共通プラットフォームとして開発し、その基礎の上に、各地域の実情に即したアプリケーションを組んで運営する。これをアジア全土の都市化を早めるべく普及させるのだ。この話は想像をはるかに超えてウケた。アメリカ人が名刺をもらうため行列するのを、僕は初めて経験した。

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