ゲーテ 出井伸之 対極を愉しむ - 連載

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出井伸之 対極を愉しむ
対極を愉しむ Vol.01|出井伸之|エーゲ海 the Aegean Sea vs. 瀬戸内海 Seto Inland Sea

対極を愉しむ Vol.01|出井伸之|エーゲ海 the Aegean Sea vs. 瀬戸内海 Seto Inland Sea

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美しいギリシャは“過去”に埋もれていた

美しいギリシャは“過去”に埋もれていた

 今年、G20の開催が決まっている韓国で、世界中から中央銀行総裁をはじめとした金融人や経済人が集まったフォーラムに参加し、印象的なことがふたつあった。ひとつは、これを企画した省庁の名称が、Ministry of Finance & Strategyだったこと。要するに日本でいう財務省が国家戦略も同時に担っている。これは極めて正しいと思った。
 そしてもうひとつは、各国金融人たちから聞いた、日本人としては笑えない裏話である。各国で財政赤字を半減させると宣言した今年のG20では、日本は例外になったと報じられていたが、実際には世界から見た日本の位置づけはその程度ではなかったようだ。「ギリシャが日本のようにならないためにはどうしたらよいか」が話し合われたというのだ。
 かつて僕はエーゲ海クルーズを楽しんだことがある。まぶしいくらいに晴れた夏の日に、アテネから船に乗った。しだいに見えてきたのは、美しい島々と白い壁の家々だ。そして、あちこちにギリシャの歴史を紹介する博物館が数多く存在する。そこには人類の遺産というべき、素晴らしいエーゲ文明、ギリシャ文明の数々の芸術作品が展示されている。
 ある港で船を降り、そうした博物館を見学したあとの屋外レストランでは、頭上にぶどうの木が青々と生い茂り、涼やかな風が木々を揺らすと、時折、木漏れ日が差す。その心地よさといったらない。しかも、僕の大好きな猫があちこちで毛繕いをしている。僕はギリシャをすっかり気に入ってしまった。
 だが、そのギリシャは経済破綻してしまった。今年のG20での裏話を聞いて僕が思い出したのは、ギリシャでは“過去”しか目にしなかったことだった。歴史や伝統、博物館や美術館はあるけれど、それはすべて過去のものだった。“未来”がなかったのである。

出井伸之氏 Nobuyuki Idei

1937年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。クオンタムリープ代表取締役。ソニーアドバイザリーボード議長、アクセンチュアや百度(Baidu)の取締役も務める。'60年ソニー入社。スイス、フランス赴任後、オーディオ、コンピューター事業の責任者を経て、社長、会長兼グループCEO、最高顧問を歴任。近著に『日本大転換』(幻冬舎新書)。

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