ゲーテ ヒューマン

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「24時間仕事バカ!」の熱狂人生 2度の奇跡を起こした男が訴える世界企業のCEOがその力を使うべき道 スターバックスコーヒー カンパニーCEO Howard Schultz ハワード・シュルツ

「24時間仕事バカ!」の熱狂人生 2度の奇跡を起こした男が訴える世界企業のCEOがその力を使うべき道 スターバックスコーヒー カンパニーCEO Howard Schultz ハワード・シュルツ

本社に行って知った産地を、社員を、顧客を愛するということ

店舗でも笑顔を絶やさない顧客主義はもちろん、環境保護、生産者保護、さらには従業員を大切にする姿勢など、高い企業倫理で知られるスターバックス。シアトルの本社でも、その証がそこかしこに。

スターバックス シアトルの本社

シアトル中心部から車で10分ほどの本社。社内ではサポートセンターと呼ばれる。あくまで店舗が主役なのだ。ちなみにこの建物は築100年超だった。

スターバックス シアトルの本社 スターバックス シアトルの本社 Love for Customers

社内のあちこちに、顧客重視をうたう標語のような言葉が掲げられていた。下は、顧客が自分のアイデアを自由に入力、会社に提案できる仕組み、マイ・スターバックス・アイデア・ドットコム。

貧しい家庭で育ったからこそ

 1971年創業のスターバックスに、マーケティング責任者としてシュルツが入社したのは29歳の時。'82年のことである。翌年、イタリアを訪れた彼は、街のあちこちにある小さなエスプレッソバーに気づいた。カウンターの向こうから気さくな声がかかる。バリスタは優雅にエスプレッソを注ぎ、カップを手渡した。心地いい雰囲気がバーを包んでいた。シュルツは驚いた。ここはただコーヒーを飲んで一休みするだけの場所ではない。居ること自体が素晴らしい体験になる「劇場」だと。
 だが、当時のスターバックスはコーヒー豆を売るだけ。シュルツは退社し、自らコーヒー店を立ち上げる。翌年、投資家から380万ドルをかき集めてスターバックスを買収した。ここから、奇跡の物語は始まる。
 なぜ、スターバックスはこれほど支持されたのか。
 「何より“自分の場だ”と顧客が感じられること。次に、クオリティの高いコーヒー。それを接客やインテリアなど、あらゆる面で演出し、顧客の期待を超えたからだと考えています」
 シュルツが目指したのは、単なるコーヒーショップではなかった。家庭、職場・学校に次ぐ“第三の場所”。自分自身を再発見する場だったのだ。そのために最も重要なもの。それこそが、心地いい雰囲気と高い品質のコーヒーを作り出せる人材だった。シュルツが何よりも大事にしたのが、彼がパートナーと呼ぶ従業員たち。だからこそ、ピープルビジネスなのである。
 シュルツの姿勢は全米企業を驚かせた福利厚生にも表れている。すべての従業員に健康保険を適用し、ストックオプションを与えた。週20時間以上勤務するパートタイマーにまで適用範囲を広げた企業など例がなかった。背景には、シュルツ本人の“個人的感情”もあった。
 「私はニューヨーク州ブルックリンの貧しい団地で育ちました。父親はブルーカラーのきつい仕事を転々としていました」
 7歳のある日、父親は仕事で大怪我をし、その日に解雇された。労災保険も健康保険も解雇手当もなかった。父親は達成感を抱くことも、仕事に意義を見い出すこともできなかった。働く人が決してそんなことにはならない企業を作りたかった、父親のような目に遭う人をなくしたかった、と彼はいう。
 実際、シュルツは企業としてのポリシーを徹底した。人を大切にするだけではない。利益の名のもとに倫理観や誠実さを失わない、という姿勢もそうだ。だからこそ優秀な人材が集まり、顧客はそれを支持したのである。

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