第65代横綱。幕内優勝22回。現在は一代年寄・貴乃花として、貴乃花部屋の師匠、および日本相撲協会理事。
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この日に予約を開始した。股割りをしながら、席の販売状況をチェック。正直、ちょっと邪魔!?「一番すぐに売れるのが、土俵近くの枡席Aです。これは今まであまり言ってこなかったのですが、枡席Bや枡席Cといったやや離れた席が実は見やすいのです」と親方は話す。近すぎず遠すぎず、やや上から、優雅な気分で見られるのだろう。
2月5日。大阪府立体育館。
紺のジャンパーに身を包んだ貴乃花親方が、どことなく落ち着かない。自分のデスクのあるスタッフルームと、隣接されている部屋を行ったり来たり。
「今日はチケット発売の初日なんです。今日が一番チケットの予約が入りますね」
隣の部屋には女性の電話オペレーター約30名ほどが電話の応対をしていた。電話は鳴り止まず、売れた席は席表に×印がつけられていく。
その様子を親方はじっと見ていた。時にはオペレーターの目の前で股わりをしながら、お客さんとオペレーターの会話に耳を傾けていた。
春場所は東日本大震災からちょうど一年後である3月11日から。親方は2月2日に大阪に入り、準備を始めていた。
「大阪の担当部長に、と協会から言われたのが2月1日。翌日には大阪に入り、この先発事務所(府立体育館内)で準備を進めています」
場所が終わるのが3月25日。その後、事務処理等があり、4月初旬〜中旬頃までは大阪に居るのだという。一つの場所を開催する15日間のために、2ヶ月以上も滞在するのだ。
「こうして、長い時間をかけて準備をするというのは意外と知られていません。それだけ、やらなければならないことが山積みなんです」
親方が頭をフル回転させているのが、集客の問題だ。いま、相撲人気は低迷し、なかなか「大入り」にならない。一人でも多くのお客さんに足を運んでもらうべく、親方は斬新なアイデアを用意していた。
「主婦の方に着物を来て、相撲を見に来てもらいたいんです。和装で来ていただければ、館内も明るくなります。私も場所中は入り口に立ち、着物の方をスーツでお迎えしようと思っています。いま、着物を着る機会ってなかなかないのだそうです。皆さん着たいのだけれど、着ていく場所がない」
先祖代々続く着物を着て、国技である相撲に足を運んでほしい。そして、相撲ファンになってもらって支えてほしいという願いがあるのだ。
「相撲は朝8時に開場し(中入り後は16時)、18時に終わります。そこから帰宅しても夕食の時間に間に合います。それから準備しても、だいたいいつもの一時間遅れくらいでしょうか。それはあらかじめ、ご家族に了解していただいて(笑)」
実はこの和装プラン、貴乃花部屋では今年一月の初場所で実現させている。おかみさんの花田景子さんに相談しながら、観戦ツアーを企画したのだ。
「平日だったのですが、最初20人規模くらいを想定していました。ところが蓋を開けてみれば、50人以上集まりました。ほとんどの方が主婦で、皆さん喜んで帰ってくださいました。この時に言われたのが、“今までチケットの買い方がわからなかった”ということでした。今回も呉服屋さんの協力を得て、4日目には約60人超の観戦が決まりました」
つまり、買い方さえ簡単であれば、需要はあるのだろう。将来的には着物姿の観戦客に対して、サインや握手などサービスを強化していきたいそうだ。続いて、親方の口から突拍子もないアイデアも飛び出した。
「吉本新喜劇からお話をいただいたら、ぜひとも出てみたい。アピールになりますしね。あとは枡席などを通しでまとめて買ってくださるような企業さんや個人のお客さんには、私が自らチケットを、直接お届けしたいとも考えています。将来的には仕組みは変わっていくと思いますが、今私にできるのは身体を使ったおもてなしなので、できることはやろうと。あとは場所初日が3月11日ということもあり、被災された子供たちを招待したい、ということも考えています。仙台から大阪だと一泊しなければいけないし、多くの課題はありますが、関係各所に相談しながら進めています」
大阪は親方が88年に初土俵を踏んだ地で、思い入れも強い。
「大阪は相撲への入門希望者が一番多い地でもありますし、僕にとってはスタートの場所。大阪の方々には相撲を気分よく見てもらって、気分よく帰ってもらいたい。そうやって、現役時代にあたたかく応援してくださった大阪のみなさんに恩返しがしたいんです」
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