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作家・浅田次郎出版記念インタビュー|「ハッピー・リタイアメントとは如何なるものか」|浅田次郎 Jiro Asada

作家・浅田次郎出版記念インタビュー|「ハッピー・リタイアメントとは如何なるものか」|浅田次郎 Jiro Asada

『壬生義士伝』『蒼穹の昴』『プリズンホテル』シリーズなど、数々のベストセラーを世に送り出してきた浅田次郎。『椿山課長の七日間』以来七年ぶりとなる、現代を舞台にした長篇小説『ハッピー・リタイアメント』が11月27日に刊行される。「ゲーテ」読者を意識して書かれたというこの作品について、話を伺った。
浅田次郎氏
プロローグで書かれているのは実話

プロローグで書かれているのは実話

 本誌連載中から注目を集めていた浅田次郎の小説『ハッピー・リタイアメント』が、11月27日にいよいよ単行本として刊行される。プロローグでは、浅田のもとに三十年前の借金を取り立てに来た男の話が書かれているが、このエピソードは、本当にあったことなのだろうか。
 「まんま実話なんですよ。だって、考えられる? ある日突然、三十年前の借金を取りに来るんだよ。思いつかないよ、こんなこと。しかも、『お金は返さなくていい。書類上の手続きをしてくれればいい』って言う。ところがさ、そいつのカバンの中に『壬生義士伝』が入っているんだぜ。嫌がらせだろ、それ」
 浅田の代表作を取りだして、目の前の男性が「浅田次郎」だと知って驚いてみせるこの男、たしかにウラがありそうだ。
 「いくら時効だからといったって、道義的責任ってものがあるし、借用書もあるから払うことにしたんだけど、振り込みじゃなくて現金でって言うんだよ。怪しいだろう? しかも、支払い当日に来たのが別の奴なんだよ。『この間来た人はどうしましたか?』って聞いたら『定年退職しました』って言うんだ。それで、カネを渡したら、逃げるように帰ったんだよ。今でもヤラレタような気がしてる。悔しいから小説にして原稿料で取り返してやろうと思った」
 プロローグの最後で、家の前で男を見送った浅田は、家人の「セールスの方だったの?」という問いにこう答える。
 「買わされちまったよ。小説」
 かくして物語の幕が開く。
ラインナップ