ゲーテ ヒューマン

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ファンに激震!人生、最後ツアー決定|吉田拓郎 Takuro Yoshida|「年をとるということは、そんなに素敵なことじゃない」|最新アルバムのテーマは、誰も描いたことにない「60代の日常」。最高峰でフル稼働してきた男の、現在の心境に迫る。

ファンに激震!人生、最後ツアー決定|吉田拓郎 Takuro Yoshida|「年をとるということは、そんなに素敵なことじゃない」|最新アルバムのテーマは、誰も描いたことにない「60代の日常」。最高峰でフル稼働してきた男の、現在の心境に迫る。

「吉田拓郎が吉田拓郎として生きることは、すごくたいへんなんですよ」
LIVE in NHKのバックステージ
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ファイナル・ツアーの助走
Live in NHKのバックステージ
ファイナル・ツアーに先立ち、3月にはNHK-BSでスタジオライヴ『大いなる明日へ〜復活! 吉田拓郎〜』が放映された。会場はNHK101スタジオ。「ガンバラナイけどいいでしょう」「歩こうね」など新曲のほか「春を待つ手紙」「唇をかみしめて」「親切」も歌われた。「僕の状態もバンドの状態も順調です。いよいよツアーだ」。
嫌なことを全部やめて、健康を取り戻した

嫌なことを全部やめて、健康を取り戻した

 アルバムの1曲目、「ガンバラナイけどいいでしょう」は拓郎の主治医とのやり取りから生まれた。
 「僕はね、けっこう頑張って生きてきたと、自分では思うんですよ。つま恋もやったし、病気からも復帰した。でも、なんとなく満足感はない。痛快な感じはずっとしていない。ストレスをため込んで暮らしているような気がしていた」
 うつ病かと思い、薬も処方してもらった。そんなとき、肺がんの治療以来からの主治医のもとを訪れ、たしなめられたという。
 「拓郎さん、お酒は飲んでいるんですか?」
 「ええ、まあ、少しは。お酒はおいしいですからね」
 「うつ病の人は、酒がうまいとは言わないものです。薬は全部捨てたほうがいいですよ」
 次に訪れたときには、魚釣りやプロ野球のキャンプ見学やサッカー観戦など、活動的になるためにつくったスケジュールを持参した。
 「魚釣りは好きなんですか?」
 「いえ、そんなでもないです。生臭いし、寒いし」
 「サッカーは?」
 「1点か2点しか入らないゲームをずっと見ているのは嫌ですね」
 「拓郎さんね、好きじゃないことはやめましょうよ。あなたが大好きな、家でゴロゴロする生活のほうがよっぽど体にいいですよ」
 そして、主治医の言うとおりに家にいたら、元気になっていった。その体験から「ガンバラナイけどいいでしょう」が生まれた。
 「でも、頑張らないのは、実は難しいんですよ。頑張って生きていないと人から悪く思われそうで、怖い。だから油断をすると、すぐに頑張ってしまう。僕はね、長い付き合いの人に対しては気を許して、無礼でわがままな男なんです。だけどそうじゃない場面では、すごくサービス精神が旺盛」
 そう言ったかと思うと、こちらを見てにやにやと笑う。
 「今もね、僕、けっこう一所懸命しゃべっているの、わかります? 自分に演出とかして、間とかも考えながらやっているんですよ」
 はい。十分に承知しています。だって、かなり楽しいですから。
 「そうでしょう(笑)」
 事実、話すテンポも身ぶり手ぶりも絶妙で、話を聞くこちら側が思わず声を上げて笑ってしまう。いつでも吉田拓郎は、エンタテイナーだ。
 「そうでしょう(笑)。こういうの、無意識にやってしまうわけです。だから、僕、お酒を飲みに行ってね、おいしいんだけど、帰るとぐったりと疲れている。お酒の席で、いつの間にか周りにサービスしているんですよ。吉田拓郎が吉田拓郎として生きていくのは、みなさんが思うよりも大変なんです」
 新譜に「真夜中のタクシー」という曲がある。設定は深夜のタクシーの中。主人公は饒舌な運転手に閉口しつつ、でも相手をする。
 「あれも、僕の実話ですよ(笑)」
 しかし、こちらは客。運転手に付き合わなくてもいいのでは。
 「そんな非人間的なことは、僕にはできない。いつも、家の前で降りるまでサービスをしてしまう。
 思えば、この性格は若いころからです。’70年代に広島から東京へやってきたとき。ここで花を咲かせてやる。東京のメディアをギャフンと言わせてやる。そんな意気込みでやっていた。当時はお金もなくて、いつも新宿の飲み屋で一人でビールを飲んでいましたよ。そこで隣に居合わせたお兄さんやお姉さんに、お前、頑張れよ!なんて励まされると、ものすごくうれしくてね。その人を一時間は楽しませたい。本気で思った。好かれたいから、相手が喜ぶことを話し続けた。あの時期に染みついてしまった性格です」
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