ゲーテ ヒューマン

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ファンに激震!人生、最後ツアー決定|吉田拓郎 Takuro Yoshida|「年をとるということは、そんなに素敵なことじゃない」|最新アルバムのテーマは、誰も描いたことにない「60代の日常」。最高峰でフル稼働してきた男の、現在の心境に迫る。

ファンに激震!人生、最後ツアー決定|吉田拓郎 Takuro Yoshida|「年をとるということは、そんなに素敵なことじゃない」|最新アルバムのテーマは、誰も描いたことにない「60代の日常」。最高峰でフル稼働してきた男の、現在の心境に迫る。

体調を崩してファンを心配させていた吉田拓郎さんが、ラストツアーを発表。最新作も完成させた。創作とは本来、生命の躍動を讃えるものであろう。だがこの最新作は死を見つめ、「老い」と向かい合っている。人生の終盤を迎えた男の小さな日常を描いている。数多くの伝説を残す、エネルギーの塊のような拓郎さんが、だ。この作品の世界は、実に深く、同時になんとも心地よい。いま改めて仕事と人生についてたずねた。
”午前中”に生み出したアルバムの日常的レコーディング風景
午前中に…』は、’83年の『情熱』以来、全曲を吉田拓郎が作詞作曲している力作。「ギター弾きと一緒にやりたかった」と語るとおり、拓郎バンドのレギュラーメンバーの古川望、そして小倉博和など腕利きのギタリストたちがプレイしている。アレンジとストリングスの瀬尾一三やドラムスの島村英二など古くからの盟友も参加。
 吉田拓郎がキャリアの最後となるコンサートツアーを行おうとしている。しかも、その最終章を意識したアルバムをすでにレコーディングしている。ニュースが伝わってきたのは、昨年の暮れだった。
 この報道には信憑性はあるのか? そもそも拓郎は元気なのだろうか? ファンの間ではさまざまな憶測やうわさが広がった。
 '70代から日本の音楽シーンの先頭を走り続けてきた吉田拓郎は、2006年9月、フォーク・トリオのかぐや姫を誘い静岡県掛川市にあるレジャー施設、つま恋の多目的広場で大イベントを成功させた。熱量の多いファンが、日本中からおよそ3万5000人集結。平均年齢は49歳。人生の盛りを過ぎつつある世代がこれほど大挙して押し寄せるのは、世界の音楽シーンを見回しても稀有な例だ。
 しかし翌年の10月、拓郎はコンサートツアーをその途中でキャンセルした。理由は慢性気管支炎と胸膜炎と発表。’03年に肺がんの手術をしていることもあり、このまま引退するのでは、という不安がファンの間でくすぶり始め、やがて彼らは、拓郎の歌が聴けない現実を受け入れようと努めるようにもなった。ただただ健康を取り戻してくれることだけを願った。
 そんなおりに届いた活動再開のニュースだった。そして、多くのファンが半信半疑のまま迎えた今年の元旦、突然、拓郎の公式サイトにブログがアップされる。
 「明けましておめでとうございます」
 ずっと心配し、期待し、期待を自ら打ち消し、でも復活をあきらめずに待っていたファンたちがズッコケるような書き出しだった。
 しかし、文中の一行には誰もが元気づけられ、勇気づけられた。
 「さて僕は元気です!」
 “!”付きである。さらに、こうつづられていた。
 「今年は『うるさいなあ』と言われても歌います」
 拓郎は間違いなく帰ってくる。しかも、新譜が完成しつつあること、NHKでスタジオライヴを放映すること、そして夏にツアーを行うことが宣言されていた。ファンにはこれ以上ないお年玉である。
 しかも、新譜は1984年の『FOREVER YOUNG』以来25年ぶりに全曲を作詞作曲しているらしい。興奮した。
 3月の終わりにレコード会社から新譜のリリースが届く。音はない。蛇の生殺しだ。なにしろ復帰作。どんなに情熱的な曲がつまっているのだろう? 期待は高まる。アルバムタイトルは『午前中に…』。想像を膨らませながら曲名を眺めると、1曲目は「ガンバラナイけどいいでしょう」とある。あれ? ちょっと予想とは違っていた。次の曲は「歩こうね」。そうか……。そして「フキの唄」。フキとは、あの山菜のフキのことだろうか……。
 しかし、その翌週に届いたCDを聴いたときには、こみ上げてきてしまった。
 63歳のひとりのミュージシャンの今が、気取らず、飾らず、等身大で表現されていたのだ。
ラインナップ