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さだまさし マジックの常連とお祝いの酒

酒の渚 さだまさし
『ぷれいやぁず』(2) お祝いの酒

「凄い店があるんだ」と、僕は何人も仲間を連れて『ぷれいやぁず』に通った。

といっても年に二~三度ほどだったのだけれど。

五年以上通った頃のことだ。

常連の一人に入れて貰えたのかもしれなかったが、ある時、マジックを披露する前にマスターがふと、僕に向かってこっそりウィンクをした。

このマジックは何遍も見て来たでしょう? タネにも気づいているはずだよ、という謎かけのような笑顔だった。

そのマジックというのは、お客さんに一枚のカードを引かせる所から始まるが、マスターはこの時巧妙に自分の引かせたいカードを相手の指の間に滑りこませる技術を持っていたのだ。 

つまりお客が自分で引いているのではなくて、マスターの望むカードを「引かされて」いるというわけだ。

何度引いても同じカードだ、というコントのようなオープニングのマジックだったが、以前、僕が引こうとした瞬間、明らかにカードが生き物のように指の間に滑りこんでくるのに気づいたことがあった。

そしてその時多分マスターも気づいた。

僕は「引きません。選びますからそこへ拡げたまま伏せて置いてください」と頼んだ。

そして僕は中程のではなく、わざわざ右端のカードを選んだのだが、やっぱり同じカードだった。

店中が爆笑した。

マスターは心理ゲームにも長けている人だったのだ。

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Illustration=粟津泰成(YASUNARI AWAZU)

*本記事の内容は17年7月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。 14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)