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さだまさし マジックの常連とお祝いの酒

酒の渚 さだまさし
『ぷれいやぁず』(2) お祝いの酒

『ぷれいやぁず』(2) お祝いの酒

熊本市内のスタンドバー『ぷれいやぁず』のマスターは、昭和を代表する九州でも屈指の名バーテンダーだ。普段はどちらかと言えば飄々(ひょうひょう)として饒舌(じょうぜつ)ではないのに、カードマジックやサイコロマジックばかりか、お客を笑わすためだけのコントマジックまで披露してみせる剽軽(ひょうきん)さもある、不思議なマスターだった。 

短髪、色黒の顔に渋い色のシャツとネクタイとベスト。

昭和のバーテンダーらしい姿でいつもカウンターの中に立っていた。

弟の親友に連れられて行ったのが初めだったが、丁度バブル期に入った頃で、弟が当時流行り始めた飲み方だった「ブランデーをクラッシュアイスで」と頼んだ時、笑顔のマスターの眉が少し動き、呼吸に少し間が空いた。

勿論全く嫌みは感じなかったが、その瞬間に、僕の胸の内でこの飲み方はマスターの好きな飲み方ではないのだろう、と感じた。

酒にあるのは上戸(じょうご)と下戸(げこ)だけで、勿論上品も下品もない。

どんな酒をどんな風に飲もうが誰にも咎められる理由などないのだ。

ただ『学舎・ぷれいやぁず』の先生は無言で「その飲み方は、僕は余り好きじゃない」と言った気がした。

何故そう感じたかは解らないけれども、それ以来僕はその飲み方をやめてしまった。

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Illustration=粟津泰成(YASUNARI AWAZU)

*本記事の内容は17年7月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。 14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)