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前田健太 人生も野球も、余裕が必要

毎年、コンスタントに戦績を残す秘訣
2割のゆとりが勝利をグッと引き寄せる。

試合も20%くらいのゆとりを持って。
『常に全力!』だとパンクしてしまう

2割のゆとり。これは言わば、前田の信条のようなものだ。プロでもそれを貫いた。

高卒2年目で9勝を挙げながら、3年目の2009年は8勝に終わった。そこで前田は、「常に全力じゃダメなんだ」と、実戦で「2割のゆとり」を学ぶ。

それが、成果として現れたのが翌10年だった。きっかけは、4月8日の東京ヤクルトスワローズ戦。「8割くらいで投げてみよう」と投じたボールが、自分でも驚くほど完璧な1球だったという。8割の感覚を身につけた前田は、8回無失点で勝利投手。シーズンでも15勝で最多勝、最多奪三振、最優秀防御率、そして「日本一の投手」の証である沢村賞にも輝いた。

前田は「挑戦していかないと成長が止まる」と話す。11年は前年のイメージに捕らわれすぎたあまり10勝。自らの慢心を払しょくするように、ウエートトレーニングを導入し、新たな変化球の習得にも励み続けた。2年目のプロ初勝利がキッカケで始まった登板前日からのルーティンも、20以上に増えた。すべては「ゆとりを持って仕事をする」ため。15年まで6年連続2桁勝利。前田のゆとりの精神は、メジャーリーガーという飛躍となって結実した。

ロサンジェルス・ドジャースでも、新たな自分を築き上げた。強打者揃いのメジャーリーガー対策として、16年からデータ収集と整理をルーティンに導入するなど、メジャーへの適応に努めた。1年目でチームトップの16勝。それでも、前田は「この世界、浮き沈みはある」と自分に言い聞かせる。

16年が上昇の年なら、今年は下降の1年になる可能性だってある。5月11日現在の戦績は3勝2敗、防御率5.03とやや苦しいスタートとなったが、前田は「不安がなくなったら、選手として終わる時」と現実を受け入れている。

「いい時があれば悪い時もある。『いい時を続けたい』って思えば、成長できるはずなんですね。『こんな生活、いつまで続くんだろう』って不安はあるけど、近い目標でも、それを立てることで頑張っていける」

不安はある。けど、自分のやり方は間違っていない。その答えは、いつもマウンドにある。

  • Kenta Maeda
    1988年4月11日、大阪府生まれ。PL学園を経て、2007年に広島東洋カープに入団。16年にロサンジェルス・ドジャースに移籍し16勝を挙げ、ナショナル・リーグ西地区の優勝に貢献した。今シーズンは、開幕から不調が続いた。一時は、防御率が8.05まで落ち込み、焦りもあったという。しかし、冷静に自分の投球を振り返り、調整し、持ち直しつつある。

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Text=田口元義

*本記事の内容は17年5月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。 14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)