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がんになって考えたこと。坂本龍一

がんになって考えたこと。
坂本龍一の養生訓

明らかに厳しくなった自分の音へのジャッジ

「『disintegratioin』という曲では、鍵盤ではなく、ピアノのボディーに収まっている弦を奏でました。でも、この曲をプレイバックした時、音色がどうも気に入らなくてね。ダメなレベルではない。OKにすることもできました。コンセプトや音の概念は気に入っていましたから。ただ、やはり納得はできない。迷ったけれど、最初からやり直しました。音楽の骨格はそのまま、音色を変えたんです。すると、格段によくなってね。そういう局面でのジャッジは、以前よりも厳しくなりました」

「disintegratioin」を直訳すると、「崩壊」「風化」。少ない楽器を使い、オーケストラのように立体的で、スケールを感じる音楽になっている。

「これからは、やりたい仕事、やるべき仕事をさらに厳しく選ぶと思います。そして、限られた時間とエネルギーを注いでいく。一方、やりたくないことに時間は使わないようにしたい。無駄だと感じる仕事はストレスがかかるでしょ。それはカラダによくないのでね」

病気を経て、聴く音楽にも変化が表れたそうだ。

「意外なことに、今まで興味の対象外だった音楽に心が反応します。キューバのシンガー、オマーラ・ポルトゥオンドとか。ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブに出ていた人です。実は、ああいう古いタイプのポピュラー音楽は、あまり興味はありませんでした。ところが、ふと耳に入ってね。声に心が反応して、号泣してしまった。その時に思ったんですよ。せっかくがんを体験したから、病後に心に響くようになった曲を列挙してみようと。オマーラのほかは、ビューティフルハミングバードの女性ボーカルの小池光子さん、カナダの先住民族の血を引く女性シンガーのタニヤ・タガクなどです。声に特別な何かがある人に対して感度が上がりました」

つくり手としても、聴き手としても、坂本さんは音楽とのかかわり方が変わり、今後も前例のない音を生み続けていく。

  • 養生訓
    1 自分流の健康法を見つける。
    2 診断の結果を信用しすぎない。
    3 今ある健康を過信しない。
    4 質のいい音楽を聴く。
    5 嫌な仕事は金輪際やらない。

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Text=神舘和典 Photograph=角田みどり Hair & Make-up=YOBOON

*本記事の内容は17年4月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)

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