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さだまさし 波瀾万丈に乗り越え、呑む 

酒の渚 さだまさし
新潟のオヤジ(3) 帰還

新潟のオヤジ(3) 帰還

新潟のオヤジこと高山さんの会社が倒産し、組合のお金に手をつけた罪で実刑四年の判決を受けたことは前に話した。

実際義弟のした事だったが、高山さんは社長である自分一人の責任だとして罪を全て背負い、有罪となり、控訴もせず懲役四年の実刑に服した。

収監される日が奇しくも僕の新潟でのコンサートの日で、息子さんが楽屋に現れ、高山さんが僕のために数日前から漬け込んだ海産物を持って来たことも先に述べたとおりだ。

僕が大きな箱のまま家に持ち帰り、両親に全て話したら、父がとても感激した。

「自分が刑務所に行く前にこういう配慮の出来る男は滅多に居るものではない。素晴らしい人だ」

父はそう言って涙を流し、刑務所まで会いに行きたいと言った。

流石にそれは実現しなかったが高山さんは模範囚で、収監されてから二年四カ月後の冬の日に仮出所した。

すぐに会いに行った。

電話で連絡をし、新潟の佐藤のお姉にも連絡してホテルイタリア軒のロビーで待ち合わせた。

お姉と先に行って待っていると、思った通り約束の時間より、一時間も早く高山さんが現れて被っていたソフト帽を持ち上げて、くしゃくしゃの顔で笑った。

「やあ! まさしさん! この度は本当にご心配かけました。恥ずかしながら、ようやく出て参りました」

元気な声でそう言った。

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Illustration=粟津泰成(YASUNARI AWAZU)

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