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「北の国から」以来の衝撃 杉咲花の演技

滝藤賢一の映画独り語り座 Vol.22

『北の国から』の蛍以来の衝撃に心のダムは大決壊

今月の1本 『湯を沸かすほどの熱い愛』

(C)2016「湯を沸かすほどの熱い愛」製作委員会

  • 『湯を沸かすほどの熱い愛』
    2016年/日本
    監督:中野量太
    出演:宮沢りえ、杉咲 花/オダギリジョーほか
    配給:クロックワークス
    10月29日より新宿バルト9ほか全国公開

なんだ、この映画は! 出てくる女優全員の素晴らしいパフォーマンスに圧倒される......。宮沢りえさん、杉咲 花さん、篠原ゆき子さんに子役の伊東 蒼(あおい)ちゃん。ちょっと、興奮している滝藤です。

オープニングから1カット1カット丁寧に演出し、大切に撮られている。中野監督の愛を感じる作品。

中野さんが描く登場人物は毎回、全員愛らしく愛おしいんです。今回もそれは徹底されている。そして、中野さんは、現実から逃げることを許さない。どんなに苦しかろうが、無様であろうが、生きていかなければならない。そこに美学を持っていると思う。

本作の脚本を読ませていただく機会があったのですが、中野さんが書くオリジナルの脚本は、笑えて泣けて、めちゃくちゃ面白い! だから俳優には多くの選択肢が生まれ、逆に苦しむことになります。私も以前、中野さんにダメ出しされたことがありますよ。「滝藤さん、ちゃんと本読みました? 僕そういう風に書いていませんよね?」。作品に入った時の中野量太は普段の穏やかさは消え、まるで別人。とにかく粘って諦めない。

いかん! 中野さんへの思いが溢(あふ)れすぎて、映画の内容に触れるスペースがなくなってきてしまった! では、数々の名場面のなかからひとつだけ。

病床の母親(宮沢りえさん)の前では笑顔を絶やさず、でも後ろを向いた瞬間に滂沱(ぼうだ)の涙を流す、そして何事もなかったかのように笑顔で振り返る娘役の杉咲さんの芝居。もうここで僕の心のダムは大決壊。カメラ固定の一連の演技でしょうから、演じるほうもプレッシャーがかかると思いますが、それを演出するほうも勇気がいる。スタッフ・キャストが一丸となって積み重ねた信頼と自信のなせる技なのでしょう。『北の国から'98時代』で五郎と純が、落石に駆け落ちした蛍の元へ新巻鮭を持っていく場面がありましたが、あの蛍以来の衝撃! 杉咲花、恐るべし! あぁ、また中野映画の虜(とりこ)になってしまった......。

  • Kenichi Takitoh
    俳優。1976年愛知県生まれ。映画『SCOOP!』公開中。ドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)、『コールドケース〜真実の扉〜』(WOWOW)も放送中。

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Composition=金原由佳

*本記事の内容は16年10月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。 14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)

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