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石原慎太郎 「この国で一番贅沢な地域」

湘南 PART1
石原慎太郎

当節とは違って飲酒運転にそんなにうるさくなかったあの頃は、私が創設した月に一度のポイントレースには江ノ島や葉山のクラブからの参加艇も数多く、レース後の表彰式の後のドンチャン騒ぎには船を収めた後、連中も車を飛ばしてクラブハウスに集まり大騒ぎしたものだった。そして気の合った船のオーナーたちと計って湘南魔火矢「マヒア」組なる組織を作り、年末には温泉場まで繰り出し恐怖の魔火矢忘年会なるものをくりかえしたものだった。それをドンと称して構成していたのは早稲田のヨット会の大ボスヨット『月光』のオーナの今は亡き並木茂士、ゴルフの名解説者の岩田禎夫、そして私といったところで稚気のいたりといえばそれきりだが、当節の若者たちにはそんな遊び心もなくなったし、昔語りでそんな話をすると彼等はただ溜め息をついて羨ましがるだけだ。あれもまた湘南ならではの催しものだったに違いない。

またある時なんぞ気の合った船何隻かで寄せ合っての入り江の中でのパーティで、クルーの誰かが睡眠薬のハイミナールを沢山買い込み、チャートテーブルで潰して粉に仕立ててパンチボウルの中に混ぜ込ませてしまい、誰かがどこかで誘い込んできた外国人の若い女の子がすっかり出来上がり「ファック、ファック!」と叫んで狭いデッキの上に立ち上がりそのまま横倒しになって海に落ち込むなどというハプニングもあったりしたものだった。あれも湘南族ならぬ悪戯の故だったろう。

いずれにせよ油壺は海とヨットにかまけての私の青春を象徴するスポットだった。

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Photograph=内田裕介

*本記事の内容は16年7月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。 14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)

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